こんにちは。保険代理店サークルの菊地です。

2024年10月から火災保険の保険料が値上がりしました。正確には、保険料の計算に使う料率(参考純率)が全国平均で13.0%引き上げられています。保険料の値上げ理由は、自然災害の発生が増えたことと修理費の高騰により、保険会社が支払う保険金が以前より増えて収支のバランスが悪化したためです。

今年は能登半島で地震・豪雨の自然災害が起こっています。火災保険だけでは足りないくらい大きな被害に遭った被災者の方々も多くいらっしゃるのではないでしょうか。保険料の値上がりも踏まえると、火災保険だけで全てのリスクをカバーするのは今後ますます厳しくなると考えられます。

今回のコラムでは、自然災害などで被災したときに頼れる公的支援制度を詳しく解説します。

*出典:損害保険料率算出機構 火災保険参考純率改定のご案内

自然災害が発生すると何が起きる?

自然災害とひと言で言っても、その原因はいろいろあります。ニュースなどでよく見聞きする具体的な災害としては、台風、豪雨、地震が代表的です。これらが発生すると以下の被害事故が起こります。

  • 強風で物が飛んでいってしまう、飛んできた物で家屋などが壊れる
  • 大雨で浸水が起こる、地滑りや土砂崩れに巻き込まれる
  • 落雷で電気系統が壊れる、火災が起きる
  • 地震で建物などが壊れる、火災が起きる
  • 地震によって津波が起こり、家屋などが洪水に飲まれてしまう

被害に遭うのは家屋や持ち物だけではありません。不測の事態が起きるとケガをする恐れもあるでしょう。まさに「いざという時」になる訳です。
こうした「いざという時」に頼れるのが、国や地方自治体から受けられる公的支援制度です。

被災したときに受けられる公的支援制度

公的支援制度には、物資の提供、お金の支給や貸付、支払いの免除などいろいろな種類があります。

災害救助法

地域に適用されると、被災者は仮設住宅などの供与・炊き出しなどの供与・衣類や寝具など生活必需品の給与または貸与などを受けられます。

罹災証明書・被災証明書

各種の公的支援制度を受けるために必要な証明書です。家屋の被害を証明するのが罹災証明書で、家財や自動車などの家屋以外の被害を証明するのが被災証明書です。費用はかからず、市区町村の役所またはオンラインで申請できます。

*出典:横浜市 被災した場合の証明書の交付-罹災証明書(火災を除く)

被災者生活再建支援金

自然災害によって一定以上の被害が起きた地域には被災者生活再建支援法が適用され、被災者に以下の支援金が支給されます。

災害によって自宅家屋が壊れてしまった場合は基礎支援金が支給されます。金額は全壊なら100万円、大規模半壊なら50万円です。
家屋を再建する場合は加算支援金が支給されます。建設または購入の場合は200万円、補修は100万円、賃貸契約は50万円です。ただし、中規模半壊の場合はこれらの額の半分の支給です。

*出典:内閣府 被災者生活再建支援制度の概要

災害援護資金

被災してケガをしたり、自宅の家財に損害を受けたりしたとき、生活再建のためにお金を借りられる制度です。貸付限度額は150万円~350万円で所得制限があります。制度の対象になる災害は、災害救助法が適用された市区町村がある都道府県で起きたものに限ります。

*出典:横浜市 災害援護資金(災害弔慰金の支給等に関する条例)

災害弔慰金・災害障害見舞金

災害弔慰は、自然災害に被災して死亡した人の遺族に支給されます。金額は、死亡した人が生計維持者の場合 は500万円、生計維持者以外の人の場合は 250万円です。
災害障害見舞金は、自然災害に被災して負傷したり病気にかかったりして重度の障害が残った人に支給されます。金額は、死亡した人が生計維持者の場合 は250万円、生計維持者以外の人の場合は 125万円です。
支給対象になる自然災害は、一定数以上の住宅の滅失・災害救助法の適用といった要件があります。

*出典:内閣府防災情報 災害弔慰金、災害障害見舞金の概要

上記とは別に、市区町村独自の災害見舞金・弔慰金を受けられる場合もあります。

*出典:横浜市災害見舞金・弔慰金

災害復興住宅融資

災害によって自宅家屋が全壊し、家屋を新しく建て直す人が受けられる融資です。融資を受けるには罹災証明書が必要です。

*参考:住宅金融支援機構 災害復興住宅融資(建設・購入)災害復興住宅融資(補修)

緊急採用奨学金

被災して学費の支払いが難しくなっても学業を続けられるように、無利子で借りられる奨学金です。
このほかに、国の教育ローンも災害特例措置を取る場合がありますし、大学によっては授業料の減免措置もあります。
*参考:独立行政法人日本学生支援機構 被災・家計急変時の第一種奨学金(緊急採用)

生活福祉資金貸付制度

上記は自然災害の被災者が主な支援対象ですが、例えばコロナ禍で失業したようなケースで利用できるものに「生活福祉資金貸付制度」があります。

*参考:政府広報オンライン 生活にお困りで一時的に資金が必要な方へ「生活福祉資金貸付制度」があります。


その他に、健康保険・年金・公共料金の支払いについても手続きをすれば減免や免除を受けられますので、悩まずに相談してみるとよいでしょう。

被災したときの税金の手続き

私たちが納めている税金も、被災したときは控除や減免、期限延長などが受けられます。

確定申告をすることで受けられる控除・減免には以下のものがあります。

確定申告は毎年2月16日~3月15日が手続きできる期間ですが、被災したときは期限に間に合わない場合も考えられます。その場合は期限延長を個別申請できます。ちなみに、能登半島地震のようなケースでは被災地の全ての納税者に対して期限延長がなされますので、個別申請の必要はありません。これを地域指定と言います。

以下の地方税については減免・猶予・期限延長などの特別措置が受けられます。

  • 住民税
  • 固定資産税・都市計画税・不動産取得税
  • 自動車取得税・自動車税・軽自動車税


被災したときのために備えておくべきことは?

公的支援制度は頼りになる反面、被災者が多い自然災害のときは支援を受けられるまで時間がかかります。公的支援が受けられるまでのつなぎとして、自分自身でもしっかり備えておきたいものです。

緊急予備資金を用意しておく

被災した後に生活を立て直すためのお金です。家族構成にもよりますが、月の生活費の3~6カ月分の金額を用意しておくとよいでしょう。
ただし、現金で自宅に置いておくのはリスクが高いですし、投資信託などにしてしまうと現金に換えにくいので、金融機関の預貯金がおすすめです。電子マネーは便利ですが、通信インフラが分断されるリスクを踏まえると使い勝手が良いとは言えません。

生命保険の契約内容を確認しておく

積立タイプの生命保険契約は、一定の金額までお金を借りられる契約者貸付制度が使える場合があります。被災者は利息の減免が受けられるケースもあります。ご自身の保険契約の内容を確認しておくと安心です。

*参考:生命保険文化センター 配当金の引出し・契約者貸付

連絡先や預貯金などの一覧を家族で作っておく

災害が起きる時は、必ずしも家族全員が一緒にいるとは限りません。有事の際はお互いの携帯電話番号やSNSアカウントだけでなく、学校や勤務先の連絡先も控えてあると連絡がつきやすくなります。
加えて、緊急予備資金をはじめとした預貯金や保険契約など、有事の際に使える財産や契約の目録もあると安心です。

防災用品や非常食を準備しておく

大規模な災害が起きるとライフラインが何日も止まってしまう恐れがあります。避難所生活になったとしても、支援物資が届くまでかなりの日数がかかることも考えられます。防災用品や非常食、バッグ・リュックはホームセンターなどで揃えられますので、以下を参考に一通り準備しておきましょう。

  • 飲み水、非常食、紙皿、紙コップ、割りばし
  • 懐中電灯、ラジオ、電池、モバイルバッテリー
  • 雨具、防寒具、替えの下着
  • 防災毛布、保温シート
  • イヤホン、耳栓、アイマスク、ネックピロー
  • 身分証明書や健康保険証のコピー
  • 常備薬、絆創膏、保湿クリーム
  • タオル、ティッシュ、マスク、歯ブラシ、オムツ、生理用品
  • 予備のメガネ
  • 歩きやすい靴
  • 本やゲームなど気分転換できるもの(クロスワード、ぬりえ、トランプ など)

帰宅支援マップや指定避難場所を確認しておく

災害はいつ起こるか分かりません。自宅ではない場所にいることも多いでしょう。学校や職場からの帰宅支援マップを持ち歩いておくと安心です。自宅で被災した場合にも備えて、指定避難場所を必ず確認しておきましょう。
*参考:横浜市 港北区防災マップ

最後に

自然災害に限らず、災害や事故は突然起こるものです。それを分かっていても、非日常な不測の事態が起きるとどうなるのか想像するのは難しいでしょう。「備えあれば患いなし」という言葉のとおり、防災グッズを揃えておいたり地域や職場の防災訓練に参加したりしておけば、いざという時に余計な体力や気力を消耗せずに済みます。

普段からの取り組みで災害による被害を小さくすることを「減災」と言います。本コラムの情報がいざという時にみなさまの減災に繋がれば嬉しく思います。

サークルでは、家屋と家財に備える火災保険・ケガや死亡事故に備える生命保険のご相談を承っております。ホームページのお問い合わせまたはお電話で来店予約できますので、お気軽にご相談ください。